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RBf instituteのブログです いろいろつらつらと

ノートPCのマーケティングリサーチ

この記事は2016年11月28日に公開した記事を加筆修正したものです

Table of Contents

テーマの意義

 最近大学生でも、MacBooksurfaceなどのいわゆる高性能高額なタブレットPCを使用していることをしばしば見受ける。「スタバでMac」などこじゃれた象徴のようになり、現に大学に付設されているスターバックスコーヒーにいけばMacsurfaceを使用して何かしらしている人は必ず一人二人はいるものだ。(わたしはこの原稿をセブンイレブンのコーヒーを飲みながら、大学のコンコースの椅子に座り執筆しているが…)

 有効に使えているのか?という議論は尽きない。ただ今回はそれは置いといて、大学生がノートPCに求めることは何なのかを考察したい。もしそれを真に満たすものが「MacBook」やら「surface」でないなら…ということになるだろう。

調査方法

 というわけで上記のことを調査するために以下のような質問票を作成した(google form)でも回答を求めた。(カバーレターを付して内容は全く同じ質問票を紙でも回答してもらった)

こんな感じ

 総合的満足度を聞いたうえで、各々PCに求められる項目と判断した評価項目を5段階のリッカート尺度で問うている。また回生や実家下宿、性別など重視する項目に差が出ると思われる変数も入れている。

 そして配り、回収し、csvにまとめたデータがこち

CSVデータ

 なので、今後「NotePCMR.csv」を用いて分析をしていこう(NotePCは日本語の造語ではあるが、NotebookとかLaptopとかだと長いので勘弁していただきたい)

分析結果

 以下のような結果になりました。

  • 「持ち運びやすい」ということはかなり重要
  • 「デザイン」は男性でも女性でも有意な相関はない。(満足度なので買う時ぐらいにしか気にしないのかもしれない)
  • 「価格」は下宿生は強く意識するものの、実家通いは意識せず(自分で買ってない可能性大)
  • 「性能」はやはり意識されるようだ(といっても高性能だと起動が遅いなどはあまりないので、MacBook/surfaceユーザーは気づいてないかも。)
  • 「ソフト面」(サポート修理・搭載ソフトなど)は意識されていない。満足要因ではなくても、不満足要因になりうるだろう)  以下このような結論に至るまでを書いていきます。

データ整形

 さて、まずは欠損値・天井効果・フロア効果・回答がおかしいなどのデータをはじいていこう。今回分析対象から外されるデータは以下のとおりである。

  • 回答不備がある回答
  • 天井効果・床効果がある質問項目
  • 回答が指定の値(0から100)を超えている場合(マイナスや10000点など)
  • リッカート尺度の回答が単一(すべて3,すべて5など)
    PCdata <- read.csv("NotePCMR1.csv") #データ読み込み
    PCdata <- na.omit(PCdata)#欠損値除去
    M_PCdata <- sapply(PCdata, mean)#平均の列ごとに計算
    SD_PCdata <- sapply(PCdata, sd)#標準偏差を列ごとに計算
    CeilingEffect <- M_PCdata + SD_PCdata#天井効果を計算
    FloorEffect <- M_PCdata - SD_PCdata#床効果を計算
    CeilingEffect <- CeilingEffect[13:25]#リッカート尺度だけを取り出す
    FloorEffect <- FloorEffect[13:25]#同上
    print(split(CeilingEffect,CeilingEffect>5))#5<天井効果を取り出す
    ## $`FALSE`
    ##   処理速度   記憶容量       軽量       薄さ     大きさ       丈夫 
    ##   4.141383   4.467215   4.250318   4.504793   4.147986   4.151427 
    ## バッテリー         色       ロゴ     ソフト       価格   保障修理 
    ##   3.956249   4.767808   4.161579   4.167646   3.940133   4.250400 
    ##   サポート 
    ##   4.044956


    print(split(FloorEffect,FloorEffect<1))#1>床効果を取り出す
    ## $`FALSE`
    ##   処理速度   記憶容量       軽量       薄さ     大きさ       丈夫 
    ##   2.048273   2.653474   1.542785   1.736586   1.524428   2.331332 
    ## バッテリー         色       ロゴ     ソフト       価格   保障修理 
    ##   1.992027   2.490813   2.045318   2.159940   1.887453   2.525462 
    ##   サポート 
    ##   2.351596

 まず欠損値除去して、各列の平均標準偏差を計算。その後足した天井効果と引いた床効果を見てみると、すべて天井効果・床効果ともにFLASE(効果なし)と認められた。よかった。

 つぎはリッカート尺度の回答がすべて単一なのをはじく。ここでは標準偏差が0である場合をはじく。

    Li5<-PCdata[,13:25]#リッカート尺度だけを取り出し
    SD <- apply(Li5,MARGIN = 1,sd)#各回答者の標準偏差を求める
    PCdata <- cbind(PCdata,SD)#標準偏差=0つまり回答がすべて同じ数字
    PCdata <- subset(PCdata, PCdata$SD != 0)#標準偏差が0の回答をはじく

 最後のsubsetでPCdataの中で回答の標準偏差が0出ないものをPCdataに格納しなおす。以上のことをすればデータ整形は終了!

因子分析!

 N-noteのマーケティングリサーチ(~質問票まで)をみていただければ、今回の質問票に関して以下の5つの仮説を基に作成した。

ノートPCの満足度に影響するのは

  • 性能
  • もちはこびやすさ
  • ソフト面
  • デザイン
  • 価格

 さて因子分析していこう。因子分析では因子数の決定をはじめにしなければなりません。一応今回は最初の仮設設定で5つと設定していりが、一応固有値など確認しておく。

    Li5 <- PCdata[,13:25]
    cor01 <- cor(Li5)
    eigen01 <-  eigen(cor01)$values; eigen01
    plot(eigen01, type="b", main="Scree Plot",xlab="Number",  ylab="Eigenvalue")

f:id:nutasan8117:20170619172334p:plain

 傾きは3ぐらいから緩やかになってるものの、固有値は6ぐらい行かないと1を切らない.とりあえず因子分析をかけてみる

    library(psych)
    fit <- fa(r=Li5, nfactors=5, rotate="promax", fm="pa")
    print(fit)
    ## Factor Analysis using method =  pa
    ##              PA1   PA2   PA3   PA5   PA4    h2    u2 com
    ## 処理速度    0.19 -0.02  0.11  0.00  0.21 0.088 0.912 2.5
    ## 記憶容量    0.02  0.04 -0.08  0.00  0.92 0.881 0.119 1.0
    ## 軽量        0.91 -0.08 -0.02 -0.05  0.03 0.797 0.203 1.0
    ## 薄さ        0.92  0.02  0.05  0.01  0.02 0.844 0.156 1.0
    ## 大きさ      0.84  0.02  0.01  0.15 -0.03 0.784 0.216 1.1
    ## 丈夫        0.10  0.23  0.03  0.00 -0.11 0.074 0.926 1.9
    ## バッテリー  0.29  0.22 -0.22 -0.04 -0.12 0.233 0.767 3.2
    ## 色         -0.12  0.03 -0.04  0.40 -0.11 0.175 0.825 1.4
    ## ロゴ        0.09 -0.05 -0.02  0.87  0.01 0.775 0.225 1.0
    ## ソフト     -0.10  0.28  0.04  0.20  0.17 0.180 0.820 2.9
    ## 価格        0.04  0.11  1.01 -0.02 -0.07 0.986 0.014 1.0
    ## 保障修理   -0.07  0.68 -0.13 -0.09  0.00 0.477 0.523 1.1
    ## サポート    0.00  0.89  0.15 -0.01  0.04 0.754 0.246 1.1


    biplot(fit$scores, fit$loading, cex = 2)

f:id:nutasan8117:20170619172337p:plain

 「丈夫」「バッテリー」「ソフトウェア」が全く因子として機能してくれてない。因子負荷が全部0.4以下。丈夫はなんかやっつけでいれた質問項目なので仕方がないにしても、バッテリーとソフトウェアは結構自信があったので残念で仕方ない。

けど仕方がないので、上記3つの因子を取り外してもう一度因子分析。

    Li5 <- Li5[c(-6,-7,-10)]
    fit <- fa(r=Li5, nfactors = 5, rotate = "promax", fm="pa")
    biplot(fit$scores, fit$loading, cex = 2)

f:id:nutasan8117:20170619172341p:plain

    sort.loadings <- function(x)
    {
      a <- x$loadings
      y <- abs(a)                                             # 因子負荷量の絶対値
      z <- apply(y, 1, which.max)                             # 各変数をどの因子に含めるべきか
      loadings <- NULL                                        # 結果
      for (i in 1:ncol(y)) {
        b <- a[z == i,, drop=FALSE]
        if (nrow(b)) {
          t <- order(abs(b[, i, drop=FALSE]), decreasing=TRUE) # 因子単位で並べ替え情報を得る
          loadings <- rbind(loadings, b[t,, drop=FALSE])
        }
      }
      class(loadings) <- "loadings"                           # クラスの設定
      return(loadings)                                        # 結果を返す
    }
    sort.loadings(fit)
    ## 
    ## Loadings:
    ##          PA1    PA2    PA3    PA4    PA5   
    ## 薄さ      0.920                            
    ## 軽量      0.906                            
    ## 大きさ    0.852         0.154              
    ## サポート         0.869         0.214  0.128
    ## 保障修理         0.745        -0.212 -0.130
    ## ロゴ      0.128         0.625              
    ## 色       -0.142         0.566              
    ## 価格                   -0.105  0.647       
    ## 記憶容量                      -0.290  0.535
    ## 処理速度                       0.121  0.499

薄さ・軽量・大きさの持ち運びやすさ因子、サポート保障修理のソフト面因子、ロゴ・色のデザイン因子、価格因子、記憶容量・処理速度の性能因子が無事確定 

続いて因子の信頼係数を求めてみる。

    alpha(Li5[c(1,2)])
    alpha(Li5[c(3,4,5)])
    alpha(Li5[c(6,7)])
    alpha(Li5[c(9,10)])

信頼係数をまとめると以下の通り。

因子名 信頼係数
持ち運びやすさ 0.92
ソフト面 0.74
デザイン 0.5
性能 0.35

性能…一応今回は公の調査ではないので使用するが、信頼係数0.35はほぼ信用できない。

因子得点は単純平均を使用。

    Factor <- data.frame(Li5[1])
    Q <- list(c(1,2),c(3,4,5),c(6,7),8,c(9,10))
    for (i in Q){
      N<-apply(Li5[i],MARGIN = 1,mean)
      N <- data.frame(N=N)
      Factor <- cbind(Factor,N)
    }
    Factor <- Factor[-1]
    names(Factor) <- c("spec","mobility","design","price","software")
    PCdata<- cbind(PCdata,Factor)
    head(Factor)
    ##   spec mobility design price software
    ## 1  3.0 1.000000    3.5     4      3.0
    ## 2  3.0 2.000000    4.0     4      2.0
    ## 3  3.0 3.333333    3.0     5      1.5
    ## 5  3.5 2.000000    3.5     2      4.0
    ## 6  4.5 2.000000    5.0     1      3.5
    ## 7  3.5 1.000000    4.5     3      3.5

 こんな感じの因子得点。さてそれでは次章から相関分析・重回帰分析

相関分析

 相関分析をする。

    Factornames <- c("点数",names(Factor))
    library(GGally)
    library(ggplot2)
    assignInNamespace("ggally_cor", ggally_cor, "GGally")
    ggpairs(PCdata[Factornames])

f:id:nutasan8117:20170619172331p:plain

 相関分析したところ、有意なのは性能・持ち運びやすさと得点の間。加えてスペックと持ち運びやすさにも10%有意だった。  

 デザイン・価格・ソフト面は満足度と全く関係ないという結果になってしまった。性能と持ち運びやすさで因子間の相関があるものの、0.18と相関係数が低いので特に問題はないだろう。  このあと様々なほかの変数を用い(ex. 性別・居住形態 etc.)相関分析をしたが、この全体の数字と変わりがなかったので割愛。メインテーマの重回帰分析を行う。

重回帰分析

    model1<-lm(点数~spec+mobility+software+design+price,data=PCdata)
    summary(model1)
    ## 
    ## Call:
    ## lm(formula = 点数 ~ spec + mobility + software + design + price, 
    ##     data = PCdata)
    ## 
    ## Residuals:
    ##     Min      1Q  Median      3Q     Max 
    ## -48.080  -7.499   2.928  11.232  26.927 
    ## 
    ## Coefficients:
    ##             Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
    ## (Intercept)  11.8601    11.8375   1.002  0.31860    
    ## spec          9.1265     2.0190   4.520 1.58e-05 ***
    ## mobility      4.0307     1.2388   3.254  0.00152 ** 
    ## software      0.6988     2.0287   0.344  0.73115    
    ## design        1.0619     1.7139   0.620  0.53682    
    ## price         2.1032     1.4973   1.405  0.16297    
    ## ---
    ## Signif. codes:  0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1
    ## 
    ## Residual standard error: 15.94 on 109 degrees of freedom
    ## Multiple R-squared:  0.2694, Adjusted R-squared:  0.2359 
    ## F-statistic: 8.038 on 5 and 109 DF,  p-value: 1.751e-06

 性能・持ち運びやすさは有意になっているが、そのほかは全滅。修正済みの決定係数は0.235。そのほかの変数を用いていろいろ分析してみる。

    下宿<- subset(PCdata,居住形態==1)
    家族<- subset(PCdata,居住形態==2)
    model下宿 <-lm(点数~spec+mobility+software+design+price,data=下宿)
    model家族 <- lm(点数~spec+mobility+software+design+price,data=家族)
    summary(model下宿)
    ## 
    ## Call:
    ## lm(formula = 点数 ~ spec + mobility + software + design + price, 
    ##     data = 下宿)
    ## 
    ## Residuals:
    ##     Min      1Q  Median      3Q     Max 
    ## -54.635  -9.007   3.233  10.497  23.399 
    ## 
    ## Coefficients:
    ##             Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
    ## (Intercept)   9.3194    15.7136   0.593  0.55556    
    ## spec          9.2593     2.6584   3.483  0.00098 ***
    ## mobility      3.6980     1.6158   2.289  0.02597 *  
    ## software      1.1548     2.6784   0.431  0.66804    
    ## design       -0.1894     2.3463  -0.081  0.93596    
    ## price         5.0935     2.0267   2.513  0.01492 *  
    ## ---
    ## Signif. codes:  0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1
    ## 
    ## Residual standard error: 15.22 on 55 degrees of freedom
    ## Multiple R-squared:  0.326,  Adjusted R-squared:  0.2647 
    ## F-statistic: 5.319 on 5 and 55 DF,  p-value: 0.000467
    summary(model家族)
    ## 
    ## Call:
    ## lm(formula = 点数 ~ spec + mobility + software + design + price, 
    ##     data = 家族)
    ## 
    ## Residuals:
    ##     Min      1Q  Median      3Q     Max 
    ## -39.404  -6.486   3.516  12.051  27.299 
    ## 
    ## Coefficients:
    ##             Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)  
    ## (Intercept)  12.8882    17.7222   0.727   0.4706  
    ## spec          7.6463     3.1255   2.446   0.0181 *
    ## mobility      3.9488     1.9321   2.044   0.0465 *
    ## software      1.9490     3.2062   0.608   0.5461  
    ## design        2.4424     2.5541   0.956   0.3437  
    ## price        -0.3674     2.2419  -0.164   0.8705  
    ## ---
    ## Signif. codes:  0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1
    ## 
    ## Residual standard error: 16.46 on 48 degrees of freedom
    ## Multiple R-squared:  0.2589, Adjusted R-squared:  0.1817 
    ## F-statistic: 3.354 on 5 and 48 DF,  p-value: 0.01118

 これまた面白い。下宿生は持ち運びやすさ、性能、価格が有意になっている。対して実家生は価格に対して無頓着(?)下宿生の場合価格変数が有意になっているのに、実家生だとp値0.8705。

<- subset(PCdata,性別==1)<- subset(PCdata,性別==2)
    model男 <-lm(点数~spec+mobility+software+design+price,data=)
    model女 <- lm(点数~spec+mobility+software+design+price,data=)
    summary(model男)
    ## 
    ## Call:
    ## lm(formula = 点数 ~ spec + mobility + software + design + price, 
    ##     data = 男)
    ## 
    ## Residuals:
    ##     Min      1Q  Median      3Q     Max 
    ## -48.973  -9.643   3.829  11.425  24.485 
    ## 
    ## Coefficients:
    ##             Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
    ## (Intercept)   5.9665    15.7595   0.379 0.706239    
    ## spec         11.1114     2.7139   4.094 0.000121 ***
    ## mobility      4.7833     1.6790   2.849 0.005893 ** 
    ## software      0.2409     2.7245   0.088 0.929807    
    ## design        1.2027     2.3716   0.507 0.613809    
    ## price         1.6247     1.9121   0.850 0.398673    
    ## ---
    ## Signif. codes:  0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1
    ## 
    ## Residual standard error: 16.74 on 64 degrees of freedom
    ## Multiple R-squared:  0.306,  Adjusted R-squared:  0.2518 
    ## F-statistic: 5.644 on 5 and 64 DF,  p-value: 0.0002264
    summary(model女)
    ## 
    ## Call:
    ## lm(formula = 点数 ~ spec + mobility + software + design + price, 
    ##     data = 女)
    ## 
    ## Residuals:
    ##     Min      1Q  Median      3Q     Max 
    ## -43.704  -6.232   0.800  12.987  25.249 
    ## 
    ## Coefficients:
    ##             Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)  
    ## (Intercept)  17.6415    19.7208   0.895   0.3765  
    ## spec          6.6181     3.3508   1.975   0.0554 .
    ## mobility      3.0853     2.0303   1.520   0.1367  
    ## software      1.7095     3.4106   0.501   0.6190  
    ## design        0.4577     2.7838   0.164   0.8702  
    ## price         3.3021     2.8216   1.170   0.2490  
    ## ---
    ## Signif. codes:  0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1
    ## 
    ## Residual standard error: 15.26 on 39 degrees of freedom
    ## Multiple R-squared:  0.246,  Adjusted R-squared:  0.1493 
    ## F-statistic: 2.545 on 5 and 39 DF,  p-value: 0.04368

 女性はかろうじて有意確率10%で持ち運びやすさが有意。男性は持ち運びやすさと性能かなり気にするみたいですね。

    heavy <- subset(PCdata,使用頻度<=4)
    light <- subset(PCdata,使用頻度==5)
    modelheavy <-lm(点数~spec+mobility+software+design+price,data=heavy)
    modellight <- lm(点数~spec+mobility+software+design+price,data=light)
    summary(modelheavy)
    ## 
    ## Call:
    ## lm(formula = 点数 ~ spec + mobility + software + design + price, 
    ##     data = heavy)
    ## 
    ## Residuals:
    ##     Min      1Q  Median      3Q     Max 
    ## -43.769  -7.914   2.434  11.222  28.518 
    ## 
    ## Coefficients:
    ##             Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)    
    ## (Intercept)   11.562     12.089   0.956  0.34124    
    ## spec           8.835      2.092   4.224 5.39e-05 ***
    ## mobility       3.981      1.295   3.074  0.00274 ** 
    ## software       2.044      2.233   0.915  0.36243    
    ## design         1.196      1.907   0.627  0.53202    
    ## price          0.640      1.601   0.400  0.69027    
    ## ---
    ## Signif. codes:  0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1
    ## 
    ## Residual standard error: 16.07 on 98 degrees of freedom
    ## Multiple R-squared:  0.2778, Adjusted R-squared:  0.2409 
    ## F-statistic: 7.538 on 5 and 98 DF,  p-value: 5.034e-06
    summary(modellight)
    ## 
    ## Call:
    ## lm(formula = 点数 ~ spec + mobility + software + design + price, 
    ##     data = light)
    ## 
    ## Residuals:
    ##        2        3       14       29       35       50       53       59 
    ## -0.04902 -2.08643 -1.14704 -1.55559 -4.40031  0.23880  3.40476  7.24503 
    ##       70       79       85 
    ##  4.30570 -1.55559 -4.40031 
    ## 
    ## Coefficients:
    ##             Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)  
    ## (Intercept)   3.1724    30.4586   0.104   0.9211  
    ## spec         12.5688     6.5487   1.919   0.1130  
    ## mobility      1.0849     2.7845   0.390   0.7128  
    ## software     -2.5784     2.7440  -0.940   0.3905  
    ## design        0.6188     3.0063   0.206   0.8450  
    ## price         9.9204     2.5891   3.832   0.0122 *
    ## ---
    ## Signif. codes:  0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1
    ## 
    ## Residual standard error: 5.136 on 5 degrees of freedom
    ## Multiple R-squared:  0.9384, Adjusted R-squared:  0.8769 
    ## F-statistic: 15.24 on 5 and 5 DF,  p-value: 0.004776

 一日に4時間以上使用している人をヘビーユーザー、それ以下の人をライトユーザーとして分けてみた。これはやはりヘビーユーザー価格を気にせず性能・持ち運びやすさ重視ですね。ライトユーザーは価格しか有意でなかった。これは想像に難くない。  

考察

今回の分析結果をもとにいろいろと考えていきましょう。  

相関分析

 相関分析では性能と持ち運びやすさが、「ノートPCの満足度、性能・持ち運びやすさの間に正の相関がある」ということが確認されました。項目間の相関分析を行っても多重共線性につながるような強い相関は確認されず、重回帰分析に入れました。特に相関分析で深い考察はないので、重回帰分析に行きます。

重回帰分析

 重回帰の考察です。協調ばっか使って逆に読みにくくなってしまったのですがごめんなさい。

 

全体を見て

 全体を見たところ、持ち運びやすさと性能が有意。ソフト面・価格・デザインは有意ではなかった。

 相関がなかった変数を先に考察します。価格は置いておくとしても、デザインが有意にならなかったのは意外ですね。アンケート回収の際に結構MacBookの人とかも聞いてみると、「リンゴが好きなのではない、MacBookが性能的にもUI的にも使いやすいのだ」的な回答をいただきました。わたしもsurfaceのlogoが好きなわけではないのでそういうことなのでしょう。

 ソフト面に関して言及すれば、「満足度を図る調査であったがために有意ではなかった」と考えられます。第一保障修理を全く使ったことがないなんて人もいますし、保証修理に対して不満に思うことはあっても満足に思うことはないように考えられます。今後満足度調査の際はハーズバーグの動機づけ・衛生理論のように、満足要因・不満足要因で分けて考えることが求められと思いますね。この質問は今思い返してみると不適当であったかな?と少し自省しています。

 有意であったのは持ち運びやすさ、性能ですね。これは非常に納得できます。大学生となると毎日のように大学にノートPCを持ってくることになります。(まあ持ってこない人もいるとは思います)その時重かったり、厚かったりすると不満に思うのでしょう。また性能も普段使っているときから起動が遅かったり、動作が重かったりするなどして非常に目が付きやすい点です。言ってしまえば持ち運ばないノートPCを買うぐらいなら、デスクトップPCを買ったほうが断然いいですよね。

下宿か実家か

 下宿なのか実家なのかでかなり大きな違いが出てきました。それは価格です。

 これは「だれがそのノートPCを買ったのか」という問題に帰結するでしょう。実家暮らしの方々はご両親から入学時に買ってもらったor親のをもらったという意見をいただきました(これは質問項目に加えるべきでした…)。対して下宿の方もご両親に買ってもらったり、おさがりだったりする場合もあるかもしれませんが価格にはかなり敏感なようです。

 性能はどちらも優位ですが実家暮らしの人より下宿の方のほうが性能のP値が低いです。もしかしたら「実家にデスクトップPCがあるかどうか」が影響していると考えられます。これも質問項目に入れるべきでした…

性別による違い

 性別で分けると女性はとくにノートPCに対して、特定のこれ!というのはないようです。デザインが有意になると考えていただけにかなり意外でした。わたしは女性の方で回収したアンケートは2票だけです。こと伝えで聞きますと、デザイン重視・価格重視で分かれているようです。しかし価格重視といってもやはりデザインの最低限のラインというものがあるんだとか。lenovo think padみたいな無骨なデザインはいくら安くても無理、せめてもう少しカラフルな色という意見なようです。それで分散したようですね。クラスタ分析をすると面白そうです。後日やりましょう。

 男のかたは持ち運びやすい・性能、以上終了。  

使用頻度による違い

 これはかなりわかりやすく、「ヘビーユーザーの場合は性能・持ち運びやすさ重視ライトユーザーは価格重視」ですね。クロス集計表をみてみましょう。

    table(PCdata[c("使用頻度","性別")])
    ##         性別
    ## 使用頻度  1  2
    ##        1 17 25
    ##        2 26  8
    ##        3 18  4
    ##        4  3  3
    ##        5  6  5

 やはり男性の方がPC使用頻度が高いですね。しかし男性でもボリュームゾーンは1時間以上2時間以下ですか…もうすこし4時間以上が多いかと思いましたが…スマートホンのほうをよく使うというのは、いたるところで聞きます。PCは少数派になりつつありますかね

まとめ

 繰り返しになりますが今回の質問票から分かったことは以下の通り。

  • 「持ち運びやすい」ということはかなり重要
  • 「デザイン」は男性でも女性でも有意な相関はない。(満足度なので買う時ぐらいにしか気にしないのかもしれない)
  • 「価格」は下宿生は強く意識するものの、実家通いは意識せず(自分で買ってない可能性大)
  • 「性能」はやはり意識されるようだ(といっても高性能だと起動が遅いなどはあまりないので、MacBook/surfaceユーザーは気づいてないかも。)
  • 「ソフト面」(サポート修理・搭載ソフトなど)は意識されていない。満足要因ではなくても、不満足要因になりうるだろう)

 今回初めて自作の質問票でデータを取り、分析しました(今までは政府統計資料とか企業の財務諸表とかばっかり)。聞くべきだった質問が聞けてないとかいろいろ至らないところがあったのは残念ですが、いい経験になりました。次やるときはもっと面白い結果を皆さんにお届けできるよう頑張ります!

【書評】学者の使命・学者の本質

 

学者の使命・学者の本質 (1950年) (岩波文庫)

学者の使命・学者の本質 (1950年) (岩波文庫)

 

 本日の書評はこちら。フィヒテ著『学者の使命・学者の本質』です。

 

総評

大学生へ

 とりあえず、大学生になったときに読めれば・・・

 というのがありきたりですが、この本を読んだ感想です。(というかもっと若いときに読んでいれば・・・系の書評が多すぎてうんざりなことはある)

 twitterでも4月の入学シーズンになると、大学教授が「新入生よ、勉強しよう!」というtweetをしている一方、それに「せっかく大学生という身分なのだからもっと人とは違うことをすべき」という論争が巻き起こったりします。

 

togetter.com

 とりあえず、わたしとしてはtwitterで論争するまでもなく、すでに論考があるのでどうぞこの『学者の使命・学者の本質』を参考にしていただければ・・・と思います。残念ながら、わたしは「せっかく大学生になったのだから、大学生にしかできないことをやるべき」派ではありませんし、今回ご紹介する論考も「大学生よ、勉強しろ」系です。

学者の研究不正などの問題

 学者たるべき者の矜持

 研究不正というものが大々的な問題として注目されはじめてからしばらくです。この本(というか講演)が行われていたのは1794年から1811年のこと、そのときからすでに研究不正の芽はあったということ、そしてフィヒテはカントの『学問芸術論』にある学問批判から

 「じゃあ学者たる者どうあるべきか」

という問題に切り込んでいったのが本書です。

内容

時間があれば追記またはまとめます。(時間がないのでいくつか印象的な節を引用します)

(学生の自由に関して)「汝はただしいことをせず、なちがったことをするならしてもかまはない、さうしたところでせいぜい、汝が侮り軽んぜられ、みづから心のうちを覗き込む時自分自身を軽蔑せねばならなくなるという以上の損害は招かないようにしてやらう。この危険を犯してやらうと思ふならかまはずやれ。」 P.205

まあすべてはこういうことです。自分にとって合目的的であれば、他人からどう言われようがそれをやればよいのです。それについて(法令に違反しない限り、最近では公衆の倫理的感情に反しない限り)なにをやってもよいでしょう。またこんな学生批判もされています。

学校でもぼんやりと無意識の状態で日を送り、みづから好きこのんですることでなければ何もせず、出席してはならないぞといふのが最高善であり唯一の人生の楽しみだと心得ていたその種の生徒がーもう一度言う、その種の生徒が大学での人生の楽しみだの、大学の無拘束だのについてのそういう概念どう理解するかは考えることができる、(普通に学校をなまければそんな機会いくらでもあっただろうし、そもそも大学生活で得られる者を知っている者からすればその行動がなぜ楽しいと思えるのかわたしには一つの謎だ) pp. 362-363

 

現代の学者の批判について

かれらがその研究の方向をさだめる時それは真であるか、よく貴くするものであるかーとは問はず、ー喜んで聞かれるだろうか、と問ひ、この研究で人類は何を得るだろうか、とは問はず、この研究で私は何を得るだろうか、幾らの金銭、どの王子のありがたい御解釈を、或ひはどの美人の微笑を得るだろうかと問ふのを聞いた。 pp. 89-90

 

【書評】努力論

 今回紹介したい本はこちら

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

 

 真田露伴と言えば『五重塔』などの小説が有名であるが、こちらは評論文となってる。それがなかなか現代にも通ずるものがあると深く感銘を受けたので是非紹介したい。

時代背景

この本の真意は1939年に、岩波文庫にこの書が入ったときそのあとがきに記されている。長い長い一文ですが以下の通り

主意は当時の人々の功を立て行をなさんと欲するあまりに、不如意のこと常に七、八分なる世にありて、徒に自ら悩み苦しみて、朗らかに爽やかなる能わざる多きを悲しみ、心の取り方次第にて、作用に陰惨なる思のみを持たずとも、陽舒の態を有して、のびのびと勢いよく日を送り、楽しく生を遂げ得べきものをと、いささか筆墨を鼓して、苦を転じて楽と為し、勇健の意気を以て懊悩尚早の態度を払拭せんことを勧めたまでであった。(強調はブログ筆者による)

つまりは気の持ちよう次第である。のにもかかわらず、思い通りにいかないからと言って人生を肯定的にとらえないのは損でしょ(どうせこの世の7,8割はうまくいかないことなんだし)といいたい。

その中でどのように心がけるかという点を様々な視点から考察している。殊に努力に関する記述が多かったため『努力論』としたそうだ。

努力は報われるか否か

最近ブログやらネットニュースやらtwitterやらでこの手の話題は事欠かない。思うに断片的な情報の渦を拾い集めても、「あーこういう意見の人もいるんだー」としか思えないので説得力のあるまとまった文章を読んだほうがこういうのは良い。(ネットのほうがいいという意見もあるがそれを否定するつもりはない。一長一短の関係かと)

"努力は報われない"という人たちのことを露伴は、「運命前定説」の虜になっていると批判する。すなわち幸不幸はあらかじめ運命で定まっていると考えがちで、生年月日だの、手相だの、星座だのに縛られるなと強く進めている。

特にこの記述は、なかなか力強く断言していて面白い

成功者は自己の力として運命を解釈し、失敗者は運命の力として自己を解釈して居るのである。

なかなか的を射ているのではないか。

そして努力により自己を革新していくことにより、業をなす機会をつかむのである。ここは「万全を期して天命を待つ」というその一言にすべてが集約されているだろう。

幸福になる(運を寄せる)にはどうすればいいか

このあたりから自己啓発書チックになっていくが、大変至極まっとうなことを書いているように思う。露伴

  1. 惜福(福を惜しみ)
  2. 分福(福を分け与え)
  3. 植福(福を植える/育てる)

の3点が重要であると説いている。そして歴史上の人物を上げ説得力を増している。(例えば平清盛は惜福の工夫にかけていたから失敗したのだというように)

詳しくはぜひ手に取って読んでみてほしい。ブログでは紙幅の関係上難しい。のでこれまでにしておきたい。

人を批判すると言うこと

この本の本流からは外れるが、現代のtwitterなどのSNSが発達してきた中で、大変興味深い一説があった。少々長いが引用したい。p.115

人の性情も多種である、人の境遇も多様である。その多種の性情が多様の境遇に会うのであるから、人の一時の思想や言説や行為もまた実に千態万状であって、本人といえども予想し逆睹する能わざるものがあるのは、聖賢に非ざるより以上は免れざるところである。

それであるから人の一時の所思や所言や所為を捉えて、その人の全体なるかのごとくに論議し評隲するのは、本よりその当を得たことではない

 犯罪は犯罪として裁かねばならないということは言うに及ばずだが、人を批判するときに相手が人間で多種多様であることを忘れがちである。またある特定の集団をまとめてその集団全員が同じことを考え発言し行動しているととらえがちであるように思う。(しかもそれが集団に属する個人の一時の所為などによって。)

ネットの登場によって世界は多種多様な人間が共生できる世界を形成していくのかと思えば、実際は文脈から切り離された一時の所思・所言・所為により多勢の人々の個人的な直感で評価される緊張感のある社会になるとは思いもしていなかった。(なおかつ評価する個人は多種多様であるため・・・)

おそらく露伴は全くと言って意識していなかったのであろうが、この一節は痛く心に響いた。

 

努力論 (岩波文庫)

努力論 (岩波文庫)

 

 

海北友松展in京博の感想やら見所

海北友松とは

海北友松とは、桃山時代の画壇を代表する巨匠です。つまりは、狩野永徳長谷川等伯と同時代の画家です。

その精緻な筆遣いから、気迫あふれる雲龍図や幽玄たる月下渓流図屏風を書き上げました。

長谷川等伯好きのわたしにとってはまさに夢のような展覧会。なかなか時間がとれずいけませんでしたがGWが始まった5月3日(水)にいってまいりました。

 

いざ京博へ

阪急河原町四条からバスに乗ること十数分。GWということもあり、観光客でごった返していましたが、大体の人は清水寺で降りてくれたので大変快適でした。最寄りのバス停は「東山七条」です

さて京博について最初に目に入ったのはツツジです。あふれんばかりのツツジに出迎えられます。

京博のつつじが今最高にきれいだという話は聞いておりましたが、まさかここまでとは思いませんでした。

本当に咲き乱れる、あふれんばかりに咲いているといった感じですね。

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絶対見て欲しい絵画3点

さてこの展覧会で是非力を入れてみていただきたい絵画は以下の3点です

  1. 花鳥図襖(狩野永徳筆)
  2. 雲龍図(海北友松筆)
  3. 月下渓流図屏風(同上)

以下つたないながらも、3点を解説していきます

 

花鳥図襖

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まず一点目は狩野永徳筆の「花鳥図襖」。海北友松が門をたたいたのは狩野派だったわけですが、狩野元信に師事したのか、その孫の永徳に師事したのかは文献によって記述が異なるそうな。

まあ何はともあれ狩野永徳筆の国宝。巨木に目がいきがちですが、今回の展覧会で注目すべきは岩の描写だと思います。

展覧会の配置の関係上よくわかるのは、海北友松が山水図屏風で描いた岩の描写は直線を鋭く使い、ごつごつした鋭利な緊張感のある岩肌になっています。

対してグラデーションで岩肌を表現し胎動的で岩が絵の中で主張せずタンチョウと松を際立たせているところが、素晴しいと感じました!

このグラデーションで岩肌を表現するのは、後に海北友松の晩年最高傑作「月下渓流図屏風」に使われています。

雲龍

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今回の展覧会の目玉ともなっていました雲龍図です。

雲龍図はその種類が多岐にわたるので、妙心寺雲龍図とか天竜寺雲龍図とかの種類がありますが、海北友松の作品は建仁寺雲龍です。

その生き生きとした描写に圧倒されること間違いなしです。それ以外に説明する必要があるのかと思えるぐらいに迫力があります。

細かい描写の話をすれば、体の方には境界線を用いず。、角や顔には太い境界線を用いています。これによって顔に迫力を出す、いわば"堅い"感じを出しているとみえます。

この襖以外にも様々な雲龍図がありますので、その違いを見ても面白いこと間違いなしです。

月下渓流図屏風

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さて最後は、海北友松の晩年最高傑作ともうたわれる「月下渓流図屏風」です。六曲一双の屏風で上にある屏風が左隻、下にある屏風が右隻です。

左隻を見てみますと、左上には丸いおぼろ月が上がっています。おぼろ月に照らされた梅や椿、右隻にはツクシが顔をのぞかせています。梅はそのつつましやかな花をつけ、椿はその華やかな花弁を今咲かせんとし、その緑緑とした葉はこの白黒の世界の数少ない彩りです。

雪解け水が小川に流れ込み、小川は勢いを増し霞がかかる松の木林に続いていく。

 

とまあ言葉で表せばこのようで、目で見れば1時間ぐらい言語能力を失うので感想がなかなか伝えづらいというのが本音です。

土筆や雪解け水、梅などの描写から鑑みるにこれは早春朝霧が立ちこめる早朝と言ったところでしょうか。なるほどたしかに、枕草子の言うように「春はあけぼの」なのかもしれませんね。

まとめ

今回あげた3点はどれも素晴しく、私が一番気に入った絵画な訳ですが、ほかにも今回全くあげなかった金碧画や素晴しい絵画の数々が展覧会にはあります。

ざっと思いついたところだけでも、山水図屏風・竹林七賢図・楼閣山水図・花卉図屏風・・・etc. 本当に素晴しい展覧会でした。

次に京博に来るのはおそらくこれですね。楽しみに待っておきましょう

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長楽寺訪問記

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前回のエントリーと併せて、長楽寺の方にも行って参りました。特に花とか関係ないので分けてエントリー。

長楽寺とは?

時雨をいとうから傘のぬれて紅葉の長楽寺 

 とはよく言ったもので、紅葉が恐ろしいほど美しいお寺です。しかし今の季節は紅葉とはほど遠い季節。だからといってこの季節にいかないのはもったいない。だからこそ趣深いところもあるのです。

成り立ちとしては平家物語にゆかりがあったり面白いところがあるのですが割愛します。こちらをご参照ください。

長楽寺 (京都市) - Wikipedia

いざ長楽寺へ

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かなり奥まった場所にあるこの長楽寺は円山公園から出てすぐ、祇園から10分も歩けば到着します。

円山公園には花見目的かすごい量の観光客が・・・もちろん八坂神社にも。

これは人が多いだろうと覚悟しながら、拝観料650円(宝物庫の展覧会をやっているので通常より高い)を払ってお参りします。

人気のない幽玄な雰囲気

全く人がいませんでした。円山公園の喧騒から逃れ、静寂で自分の足音が高く響く空間を進んでいきます。

f:id:nutasan8117:20170403172907j:plain

この木漏れ日さす瞬間に、この階段に巡り会えて、さらにこの階段を上ることができたこと(大抵こういうのは進入禁止になってたりする)、この喜びをどう表現してみせようか。

さてこの階段の脇、写真の左の方にあるのが長楽寺庭園です。

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久々の畳に気分が高揚します。そして以前の写真もこの写真も、人一人映り込んでいないことからわかるように、貸し切り状態です。そして右奥の光っている庭園にお邪魔します。

f:id:nutasan8117:20170403172853j:plain

これが今回の目的地「長楽寺庭園」です。秋になれば葉が赤く染まり、彩りたる庭園となります。繰り返しになりますが、まさに幽玄です。いろどりが失われているところにとても惹かれます。

そして何より人が全くいない貸し切り状態で、畳に座ってしかも座布団もあって、抹茶も飲める。これ以上ないコンディションです。

2分33秒ごと(独自調査による)にししおどしがカツンッと響き渡る様は写真だけでは伝わらないでしょう。それが静的なこの庭園に時間という概念を吹き込みます。

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平安の滝

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こちらの滝は平清盛の娘が修行に使ったとかなんとか。石垣の中には弁大天像など8人の仏様がいらっしゃるらしい。非常にありがたい滝。

八功徳水という名水とのことで、

  • 甘く
  • 冷たく
  • やわらかく(軟水)
  • 軽く
  • 清らかで
  • ~~(かすれて判読不可)
  • 不損喉(喉を痛めず)
  • 飲己不復腹(おなかを痛めることもない?

とのこと。これは飲むしかない。飲んだ感じは冷たく、飲んだ後ほんのりとした甘みがあります。軽いか清らかかどうかはさておき軟水であることはわかります。その他に関しては、一日たった現在特に異常がないのでその通りですね。

京都が一望できる高台

京都が一望できるらしいとのことで、そちらにも行ってみます。受付のお坊さんが「山道だからオプション的な感じで」というのを聞きましたが、さすがにそんなに体力が衰えているわけではない。

と思っている時期が私にもありました。第一、図書館の階段ですら億劫になっているのに体力が衰えていない訳がありませんでした。上っていくとこんな石橋が、

f:id:nutasan8117:20170403181725j:plain

ここまできたらもうすぐそこです。

そして到着

f:id:nutasan8117:20170403182015j:plain

なるほどなかなか見晴らしがいい。いいのですが、やはり庭園と比べると感動は薄れますね…ここら辺は好みの問題です。どっちが好きかは人によるでしょう。

 

まあそんなこんなで一度はおいでよ長楽寺、紅葉のときは大混雑が予想されますので、のんびりしたい方、幽玄な雰囲気を味わいたい方是非長楽寺へ。

長楽寺は宿坊(お寺の宿泊)も承っているようです。そちらも併せてご確認くださいませ!

八坂神社・平安神宮訪問記(花の様子)

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春休みも最終日。そうだ京都へ行こう。

八坂神社

f:id:nutasan8117:20170403172831j:plain

言わずと知れた祇園の格式高い神社。もちろんこちらにも参拝しましたが、メインはこの先にある円山公園の桜の様子を収めてくること。

 

円山公園の桜はまだ開花が始まったばかりで、来週あたりが満開の見頃になると思います。だからといって全く咲いていないわけではなく、

f:id:nutasan8117:20170403173757j:plain

このように見頃を迎えている桜もちらほらありました。やはり素敵な花ランキング一位の桜です。貫禄が違います。

ほかにも椿が咲き始めていたり、

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アセビの花は見頃を迎えています。

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春の季節の到来を感じますね。

平安神宮神苑

場所は変わりまして平安神宮神苑。私の現状京都で一番好きな庭園です。名物(?)紅枝垂桜はまだ開花すらしていませんでした

しかしちらほら春の訪れを感じさせる出来事があります。まずはこちら。

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R, Pythonでデータ分析を学ぶのであれば必ず一度はお世話になったことがあるはずの花が順調に成長しています。そうです、「Iris」です。正確には違いますが、アヤメ科アヤメ属カキツバタですね。(Irisはアヤメ科アヤメ属アヤメの3種類のデータセット。使ったことない人は使おう。おそらく一番有名なデータセットではなかろうか)

カキツバタの見頃は5月中旬、桜ばかりが注目されますが、正直カキツバタが咲いている時期が一番平安神宮が輝いて見えます

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(昨年の様子)

これは標準的なカキツバタですが、光格天皇御遺愛のカキツバタ「折鶴」も順調に成長していました。こちらは真っ白なカキツバタでその名の通り折り鶴のような花を咲かせます。平安神宮の目玉です。

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平安神宮では全く何も咲いていないわけではなく、寒緋桜や梅(もうそろそろ完全に散る)が咲いていました。

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水面に映る梅の姿に心奪われますね・・・写真をうまく撮れませんでしたが、くっきりと写る梅の姿がわびしいこの初春の庭園に春の風を舞い込んでいるようです。

ちなみに手前にある緑色のところはすべてカキツバタです。ここもきれいな紫色を魅せてくれることでしょう。

 

桜の中では泰平閣をわたったところにある平安神宮会館の手前にある桜が見頃。しかし結婚式などで使う会館には入れないので、松がとても邪魔…

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しかしまあ総じて桜は来週が良さそうです。平安神宮は5月からつつじやカキツバタなど平安神宮の目玉が続々と見頃を迎えます。

来週は円山公園・嵐山 etc. 5月は平安神宮。是非ご来訪を!

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【書評】生命・人間・経済学ー科学者の疑義ー

概要

 本記事には「新古典派経済学」「市場経済至上主義」に対する批判が含まれています。苦手な方はブラウザバックしてください。

 2017年3月15日に第一版が発売されたが、内容は40年前の1977年存命中はたびたびノーベル経済学賞が有力視されていた(本文中)宇沢弘文氏と、分子生物学の権威であった渡辺格氏の対談をまとめたものである。すでに両氏とも故人となってしまっている。

 ただ大学生協にふらーっといってふらーっと買ってしまった書籍ではあるが、読んだ後の「今まで経済学学んできて何がしたかったんだろう」と考えさせられてたり、「今後どうすればいいんだよ、どうしようもないほど問題が大きすぎる」と思うが、なによりこの対談から40年たった今、さほど変わっていない現状を前に強い無気力感に苛まれた。

 特に興味深いトピックを拾い上げて紹介したい。ただし今回取り上げるのはほんの一部であることを忘れず、是非手にとって全文を読んで欲しい。

 

生命・人間・経済学 科学者の疑義

生命・人間・経済学 科学者の疑義

 

 

現状「学問の自由」は阻害されているか

 ない。

 この本を読むまでは学問の自由は「倫理的側面から制限されている」と常々感じていました。人種差別的な研究や遺伝子組み換え技術、出生前診断にいたるまで自由な研究状態にはないと考えていた節もあります。

 ただ大きな間違いだったのは「学問の自由」は、"学問"の自由であって"科学技術研究"の自由ではないという点。

 学問とは価値そのものを定義するもので、学問の自由とはつまり「現状の価値観に疑義を申し立てる自由」であって、「科学技術をよい研究だろうが悪い研究だろうが野放図に行う自由」ではない。

 科学はフランシス・ベーコンが提唱した観測者を完全な客体として、普遍性や論理性を重んじる学問体系の一つでしかないという視点は完全に抜け落ちていた点に気づかされます。

人間の主体性・人間としての価値について

 このトピックは宇沢先生の論に大変感銘を受けたので、引用したい。人間と人間以外では、機能的に区別はされない。(人間で"ある"ことが重要)であるのに対し、人間同士では機能的に区別されると指摘した後、以下引用

宇沢「資本主義的な制度のもとでは、儲ける能力を持っているかどうかで区別していこうとする。そういう区別のしかたが問題だし、さらに、区別すること自体が問題なわけですね。」 ーP.88

  飛んでP.131、渡辺氏がすべての人を救おうなど宗教みたいで、それで経済が成り立つのかどうかという問題があるのではないかと指摘した後、宇沢氏

宇沢「そうしても経済が成り立つ条件をつくるのが経済学の役割です。経済学の必要から人間の生命を秤にかけようというのは逆ですよ」 ーP.131

 特に何も補足することがありませんが、おそらく宇沢氏に対し「理想ではそうかもしれないが・・・」という批判があることでしょう。

 理想で悪いことがどこにありましょうか。現状の経済学を見れば理想の世界を思い描けていない感覚というか、理想で思い描いている世界に対する違和感が非常に大きく感じます。経済学は社会科学なだけあって非常に社会に密接に関わり、それに束縛されている感じがします。

 一歩現実から身を引いて、理想の世界を思い描くことから始める必要があることは理にかなっていると考えています。

市場経済と脱市場経済の難しさ

 行き過ぎた市場経済の違和感というのは一般市民にとっても、経済学者にとっても感じるものなのではないのでしょうか。現に大学生の私はそれを感じます。誰よりも多く儲けることがよいことだという価値観、文化・感情・環境といった面までを金銭的に評価する点はあまりにも大きな問題どこから手をつければよいのかわかりません。そして現状変わってません。

 本文最後で宇沢氏は以下のように述べています。

 結局GNP主義というのは、コストがかかればかかるほど、いい生活をしてるような幻想をみんなに与えてきたわけですよね。それは単なるイリュージョンではなくて、実際に産業に対する需要になっていたわけですが。それに対しても費用はかからなくて、しかも文化的に豊かな生活を営めるような社会が望ましいという自明なことを再確認しておきたいと思います。 

  芸術は価値が個別的、ないしは属人的である(ラスキン的に言えば固有価値がことなる)ために、普遍性を重んじる科学とは対置されるとも宇沢氏はP.69で述べています。もし文化的に豊かな生活ということそれ自体が属人的であるならば、それにかかるコストは人それぞれです。それに対する不平等を考えるのはわたしが、市場経済的な考え方しかしてないからなのか。ここの議論に関しては全く触れられていないことに大変もやもや感がたまります。

むすび

 冒頭でも言いましたが、今回紹介したのはほんの一部です。たとえば教育や医療が産業界の下請けになってるという批判や、障害者の主体性にかんしてetc. 是非手にとって一読していただきたいです。

 

生命・人間・経済学 科学者の疑義

生命・人間・経済学 科学者の疑義